私立高校の動向
①大学附属校の状況難関大学附属の高校では、多くの学校で推薦、一般入試とも応募者が増加し、私立大学附属志向がはっきり表れました。
青山学院や東洋大学京北は一般入試の応募者は前年度より減少したものの、推薦入試は増加、一般入試から推薦にシフトしたような形になりました。第一志望者が増加したことを窺わせます。中央大学杉並、中央大学附属、中央大学はいずれも推薦、一般入試ともに増加、特に中央大学附属は推薦で120人、一般入試は188人とそれぞれ大幅に増加しました。H30年度にSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けたこと、国公立大学や中央大学にない学部を受験する場合は推薦権を保持できるという仕組み、さらに広報活動にも熱心なことが大幅増につながったのかもしれません。芝浦工業大学附属は推薦、一般入試ともに応募増になりました。今年度は女子の推薦基準を緩和しましたが、女子だけでなく男子の応募者も増加しています。
②各私立高校の入試概況
京華は進学、特進コースで推薦、一般入試ともに増加しました。面倒見の良さと進学実績で高い人気を維持しています。学科改編して2年目の足立学園は総合コースの応募者が増加し新しい体制が定着しつつあるようです。女子校では東洋女子の躍進が目立ちます。推薦では受験者が58人から176人へ、一般入試では90人から166人へと大幅に増加、年収1000万円までの家庭は授業料を無償とする「無償化プラン1000」と制服のモデルチェンジの影響と思われます。また、瀧野川女子学園は埼玉から、潤徳女子は埼玉と千葉からの生徒が増えて推薦の受験者が増加しています。
共学校では、まず淑徳巣鴨がアルティメットとプレミアムに内申基準を設定し、選抜と特進私文の基準を緩和するなどの変更があったためか、一般入試の応募者が178人の増加となりました。応募者は1000人を超えましたが、これはこの5年間で初めてのことです。東洋は特選、特進コースの定員を減らして総合進学を増やし、さらに特進では併願の内申基準を新たに設定しました。その結果、推薦受験者は44人から136人、一般応募者は49人から260人へと大幅に増加しました。駒込も勢いは衰えません。入学生が定員を大幅に超過していることから、H30年度にアドバンスコースを募集停止し、今年度は加点制度を縮小するなどその勢いにブレーキをかけていますが、逆に今年度の一般応募者は108人も増加しました。錦城学園は併願基準を緩和し推薦と揃えました。しかも男女別としていたのを男女同基準としたため推薦では女子の受験者が33人から88人へと2.5倍以上になりました。一般入試も男女合わせた応募者数が280人から549人へとほぼ倍増しています。SDH昭和第一は進学コースの推薦受験者が増加しました。これは競合する二松學舍大学附属の進学コースが基準を上げた影響だと思われます。大森学園も伸びている学校です。H30年度に英語コースを新設、コース名の変更を行い、選抜コースの基準に9科の選択肢を加えたことから大幅に応募増となりました。岩倉もH26年度の共学化以降躍進しています。H30年度に部活も頑張るL特コースを新設、H31年度は特進の定員を倍増し、S特と総進の基準をアップするなど学力レベルの底上げを図っています。
国立高校の動向
国立大学附属校の応募者は筑波大学附属、筑波大学附属駒場、お茶の水女子大学附属の3校がほぼ前年度並みの応募状況であったのに対し、東京学芸大学附属の応募増が目立ちました。筑波大学附属の男子は3年連続で応募者が400人に達せず、実質倍率も3倍台が続いています。H28年度以前の4倍を超える競争率には戻っていません。女子の応募者数は例年の数です。今年度は合格者を多く出したため、実質倍率は4年ぶりに2倍台(2.85倍)まで下がりました。筑波大学附属駒場は前年度とほぼ同じ入試状況で、実質倍率も2倍台と変わっていません。ただH29年度以前は3倍を超えていたので、やはり緩やかな入試が続いたと言えるでしょう。お茶の水女子大学附属の応募者数も前年度並みで安定しているように見えますが、合格者を106人出しています。同校の合格者が100人を超えたのはこの10年間ではありません。これらの3校はいずれも以前のような激戦にはなりませんでした。
そんな中で東京学芸大学附属は男女とも大幅増で、合わせて1000人に近い(979人)応募者を集めました。前年度に合格発表方法を変更し、繰り上げ候補者も合わせて発表したことで実質倍率が下がり、それが影響したのかもしれません。今年度は一般の合格発表後に繰り上げ合格を出すことに改めたため、実質倍率は高騰し、ここ数年は不安定な入試が続いています。